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教授挨拶
平成31年3月1日に小児科学主任教授に着任いたしました石倉健司です。この場をお借りして、私たちの北里大学医学部小児科学・北里大学病院小児科について述べさせていただきます。
広く小児科学の魅力とはなんでしょうか。それはこの国の未来を担う子どもの健康発達に責任を負う重要性はもとより、予防医学、発生、成長発達や遺伝学を含めた壮大な学問であることだと考えます。決して容易な事ではありませんが、医師を目指した者が生涯を掛けて取り組む価値のあるものだと、自信を持って言えます。
私は小児科医になって以来これまで、日々小児科学の重要性を実感しています。少子化が言われて久しいですが、裏返せばひとりひとりのお子さんに求められる医療の質は極めて高度です。元は内科から派生した学問ですが、言うまでも無く今や完全に独立し,小児科専門医のニーズは高まるばかりです。さらに学問としては遺伝学が驚くべき進歩をとげ、その恩恵にもっともあずかった専門診療科の一つが小児科学であろうと考えています。今後も重要であり発展し続ける医療、学問が小児科学です。
では北里大学医学部小児科学独自の魅力はなんでしょうか。まずは恵まれた立地と、診療体制そのものが挙げられます。新大学病院は,首都圏の政令指定都市相模原市に位置し,関連施設を含めた診療圏は広大で約200万人もの人口をカバーします。大学病院は最新設備を持ち、広く、機能的で、快適です。小児科は「周産母子成育医療センター」として整備され、大学病院内小児病院として機能しています。そして大学病院の小児科としては珍しく、PICUと広大なNICU23床を持ち、また小児病床全体では104床と非常に充実しています。この恵まれた設備で、小児の一次医療から高度な三次医療まで全てを担っています。なお「周産母子成育医療センター」は令和2年に、小児医療の研究、教育が行われている原則100床以上の小児の専門施設であることが条件である日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)の会員となりました。
また小児科は周産母子成育医療センターの一員でもあるので、産科はもとより、心臓血管外科、小児外科、泌尿器科、脳外科等多くの診療科と一つのフロアで深く連携し、小児の様々な高度医療を行っています。複雑心奇形の周術期管理、ECMO管理や腎移植、そして多くの小児外科的、脳外科的疾患の管理はその一例です。
さらに私が強調したいのは、教育の充実です。大変名誉なことに我々のスタッフが北里大学医学部ベストティーチャー賞を、しかも2019年と2020年の2年連続で受賞しました。これは北里始まって以来の快挙です。この賞は医学部全スタッフを対象に医学部学生の投票によって決定される、臨床分野と基礎分野それぞれたった一人のみが受賞できる大変貴重な賞です。個人の受賞ではありますが、優れた臨床医学教育とは、整った環境や豊富な症例、考え抜かれたシステムや教育プログラム、そしてなによりも若い人に伝えてきたいという教育を大事にする文化,土壌があってはじめて成り立つものだと思います。今回の快挙を医局一同が喜ぶとともに,さらなる教育の充実に対する決意を新たにしました。
輝かしい歴史も我々の財産であり誇りです。小児科学は北里大学病院創立と同時にスタートし、以来小児科の各領域に多くの功績を残してきました。本邦の新生児医療や小児腎不全医療、小児呼吸器疾患医療の黎明期をリードし、また現在行われている熱性けいれんの管理を確立したのも、我々北里大学小児科学の功績です。その他にも、関連施設のみならず全国の小児医療を支える人材を、数多く輩出して来ました。
これらの北里大学小児科学の魅力をさらに確かなものにするのが、臨床研究です。私は北里大学小児科学で、長年取り組んで来た臨床研究をより発展させたいと考えています。臨床研究のスタートは、常に臨床的疑問です。Evidence-based medicineが言われて久しいですが、実際の臨床は未解明の事象、疑問、謎にあふれています。単純な輸液の方法ですら、正解は出ていません。ですから日々考えながら医療を行えば、必ず多くの臨床的疑問に出会います。そしてその疑問に対する答えの殆どは、臨床の中に隠されています。それを科学的かつ倫理的に明らかにしていくのが、臨床研究だと思います。私は、これまでの自分の臨床研究の経験を活かして、臨床への貢献が大きい研究を、小児科学の様々な領域で行って行きたいと考えています。それが考える医師を育て、さらに臨床の質の向上や医師のモチベーションの醸成を通して組織の活性化につながると信じています。
最後になりますが、我々とともに本邦の小児医療に貢献し、また壮大な学問である小児科学を学びたい方はいつでも御連絡ください。日本の未来に貢献する充実した医師人生を歩めるよう、全力でサポートします。どうぞよろしくお願い申し上げます。